2018-02-06

鳥の人を訪ねてきました(前)――冬の18きっぷ旅 2017-18 (4)

さて、名古屋旅の翌日である。冬の18きっぷ旅 2017-18 最終回、今回は西へ。目的地は岡山なのだけど、8時ごろ家を出れば昼前に着くわけで、そんなことならもう少し足を延ばして、うどん県で昼うどんを食べたくなるのが人情というものである。とはいえ今回の旅はうどんがメインではないし、情報があまりない場所に行くので時間に余裕は欲しいところ。そういうわけでうどんアイランドに渡っても、遠くへは行かずに坂出でちゃちゃっと食べて岡山に戻り、目的の場所を回ったら、また坂出の夜間も営業している店で食べて帰ろうという企画。もちろん、昼はここ、夜はここ、営業してなかった場合に備えて、またあわよくば2軒ハシゴできるように他にもいくつか、と店も決め、手帳に詳細な地図まで描いたので抜かりはない。出発→讃岐うどん→第1目標→第2目標→讃岐うどん→帰宅。水も漏らさぬ計画とはこのことよ、ぬははははは。

笑ってないで出発しよう。ハシゴうどんに備えて、念のため朝食はりんごジュースのみにした、わたしのこのやる気を評価してほしい。今日は地下鉄も平日ダイヤで乗り遅れることなくひと安心、余裕でJRに乗り換えた。新大阪でやっと座れ、やれやれと『ダーク・ジェントリー全体論的探偵事務所』を取り出し、読んだり意識を失って取り落としたりしつつも二度の乗り換えを難なくこなし、うどんを求めてきゅうきゅうなる腹を抱えて予定の時間に岡山に到着。さあ、マリンライナーだ!うどんだ!


えー……

水も漏らさぬ計画が初手から蹴躓いておるわ、ぬははははは。笑ってる場合か。運行再開のめどはたっていないとか。ま、悩んでも詮方ないこと、讃岐うどんは諦めて、岡山市内でなにか食べよう。そして、そういうことなら第2目的地へ先に行った方がよかろうな。

今回の旅のテーマは、「世界で初めて空を飛んだ男」、「鳥人」浮田幸吉の足跡をたどる、といっても不明な部分の多い人なので、出生地と、彼が飛んだ場所を見ようというもの。幸吉は児島湾に面した八浜の出。八浜へは、坂出からだと瀬戸大橋線で茶屋町まで出て、そこで宇野みなと線に乗り換えて行くので、昼うどんを済ませたら、まず生地を訪れ、そこから岡山に戻って、彼が飛んだ場所を見ると効率がよかろうと計画を立てたのだったけれども、いきなりの番狂わせ。

ということで、駅前の地図で鳥人の飛んだ橋の位置を確認。表町商店街を通っていけば間違いないし、食べ物屋もありそうだ。では、参りましょう。

しかし、晴れの国じゃいうんに……


どんよりしてるよなと思ったら


雪が降りだした。大手まんぢゅう(内田百閒の好物だよ)さんは、本日定休なのですね。

さて、来ました。雪もやみ、晴れてきたので気分も盛り上がる。


京橋。幸吉はこの橋から、表具師の技術を用いてつくりあげた翼を身に着けて飛び、滑空して河川敷に降りたという。この件で彼は人心を騒がせた罪により所払いに処された。いーじゃねーか飛んだって、と思うけれども、ダメだったんだな。その後、駿府に居を定めた幸吉は、故郷の児島木綿を扱う店を開き、店を養子に譲った後は、腕のいい入れ歯師として活躍した、というところまではわかっているらしいけど、その最期は知られていない。駿府でもまた飛んで、駿府城を飛び越えたので打ち首になったとかいう話もあるけど、まさかね。刑死してたら記録が残ってるだろうし。まあいろいろ想像を刺激する人で、彼を主人公にした創作も数ある。わたしが最初に知ったのは、水木しげる『東西奇っ怪紳士録』中の「幸吉空を飛ぶ」で、えらい人もいたもんだなーとたまげたのであった。去年、飯嶋和一『始祖鳥記』で再会したのだったが、そういえば水木作品でも飯嶋作品でも、幸吉はとにかく飛ぶことに魅せられた、というか、とりつかれた人物として描かれていた(水木作品の彼はさらに「飛行バカ」という印象)。しかしギフトとはそういうもんだろうとも思う。どうしようもない要請として顕れるもの。ほかにも新田次郎、筒井康隆が幸吉を書いているそうだが、残念ながら未読。

京橋から、河川敷を見る。


上流の方。


こちらが下流。どっちの方向に飛んだのか、また川のこっち側なのか向こう側なのか一切わからんけど。230年前にこの辺を人が飛んだのだなあ。

橋から上流の方へ少し歩いてみる。


なんだこれ。シュナイザーみのある「犬」。

碑があった。


戻ってみると、食べているパンをハトやユリカモメに分けてあげている人がいた。


見ていたら、腹が減った。というわけで、来るときに見つけておいた店へ行こうとすると


……さっきのアレと同じ人が描いたとみられるモノが。


柳原良平シャッター。いいなあ。

そんなこんなで商店街のうどん屋さんに到着。別にうどんに執着があるわけではないが。


岡山うどん。というジャンルがあるかどうかは知らない。うどん およべ さんというお店。メニューの文字だけ見てハイカラうどんをたのんだら、出てきたのがこれだった。わたしの知っているハイカラうどんは、揚げ玉に刻みねぎ、たまにわかめやかまぼこが入っているものだが、岡山のハイカラうどんは、ちくわ天、味玉、かまぼこ、揚げ玉、大根おろし、おぼろ昆布、刻みねぎ、輪切りレモンと盛りだくさんで、ハイカラにもほどがある(意味不明)。このお店だけかもしれんけど。それではいただきましょうかね。お出汁をひと口。レモンの酸味が感じられて爽やかな味。麺を啜る。腰の強い讃岐タイプの麺で、本日讃岐うどん難民となったわたくし、捨てる神あれば拾う神ありだねえ、という心持になった。味玉は濃くなくて好きな味。ちく天はといえば、これがなんとウチの死んだばあちゃんを思い出させる味だった。うん、正直にいおう、ばあちゃんのちく天は、穴にてんぷら衣の生地がつまってねっとりしていた。そう、思い出の味といっても、それがいい思い出であることは必ずしもないので注意が必要。いや、全体としては美味しかったのですよ。とくにレモンの香り爽やかなお出汁は好みだった。去年漬けたレモンの塩漬けで、これをマネしてつくってみようかと思う。ちく天はマネしないけど。しかしわたしがこういうの苦手だというだけで、世間的にはこういうのが正解だったらごめんなさい。接客はとても感じがよかったし、また行きたいです、ぜひ。

はい、それでは行きましょうか、八浜へ。駅への帰りは行きと違う道を歩いてみたら


あー、そら電車も止まるわ。いや、風で倒れたのかどうかは不明だけど。そして道の反対側からこれを撮ってたら、たまたまそのときに通りかかったドライバーさんは親切にも止まってくださった。あんまり車通りがない道だったので、そのまま通ってくれてもまったく困らないのに。たまたまわたしのような者に行き会っただけだというのに。ほんとうにありがとうございました。


遠目にこれが見えて、乱視が進んだのかと思ってわざわざ確かめに来てしまった。

駅に着いて、少し前に瀬戸大橋線が運行再開していたことを知る。おお、晩うどんはいけそうではないか。えっと、時刻表は持ってきてないけど、このマリンライナーが14時12分発なんで、茶屋町まで10分少々。茶屋町から八浜までたしか5駅だし、町なかは1時間もあれば見られるだろうから、当初の予定通り17時前には坂出に着けるはず。おお、もう茶屋町か。速いぞ!快速マリンライナー!いざ八浜!


おおぅ……

ローカル線をなめてはいけないのであった。
(続く)

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