2016-12-21

真冬の霧中散歩

お寒うございます。やっとこさこたつを出して、足元だけはぬくぬくの麩之介です。皆さまいかがお過ごしですか。ぬくぬくですか。それはなによりです。


年の瀬、というほどでもないが某所での年内の仕事は今日で終了。気合いを入れて臨むべきなのだろうが、毎度毎度自転車操業で申し訳ない。もちろん今日も準備不足(なにが「もちろん」だ)。電車で座れたらそこでやろうとか甘いことを考えながら最寄り駅に着いた。電車が軒並み遅れている。わたしの向かう方面は5分ほど、反対方面は50分ほどの遅れが発生しているが、まあよくあることなので、とくに気にはしていなかった。珍しく乗車してすぐに座れたので、少し調べものをしてから、読みかけの文庫本を開く。そろそろ着くという頃合いにふと顔をあげて窓外を見ると、霧。


それもけっこう濃い。そら電車も遅れるわ。通路を挟んで向かいの席では、小柄なおじいさんが窓に向かって正座して霧を見物している(たぶん)のであった。妙に可愛らしかった。


仕事を終えると昼を少し過ぎるくらいになるのだけど、今日は少々調整が必要な事案があり、帰りの時間がいつもより30分遅くなった(電車が30分に1本だからですね)。午後のこの時間、まだ霧が晴れていないのは珍しい。駅に向かうタクシーの中でも(贅沢しているわけではなく、この時間帯は駅に行くバスがまったくないからです)、運転手さんとそんなことを話した。

電車が最寄り駅に近づくにつれ霧が濃くなっていき、ひとつ前の駅ではかなりの濃霧になった。せっかくなので途中下車してみることにした(暇人)。最寄り駅との間には山があり、霧はその山を越えることはなかろうと思ったのだ。


駅前の様子。


上の方が見えない。


こりゃすごい。


神社の鳥居のある風景。


こういう道好き。


モスクワ。


ではなく、県庁舎。


ゆるい坂道をどんどん下って、湖に出る。


なんのことやらわかりません。



水鳥たちも霞んでいる。


オオバン(よくカモにカツアゲされてる鳥)が多い。昔はそんなに見なかったと思うんだけど。彼らは潜って水草を採ってきて食べる(そして食べていると、いつの間にやらカモに囲まれ、その水草を奪われる)。


一瞬前にはそこに鳥がいたことを、波紋が教えてくれる。



人が近づいてくるらしい。



すぐそこのホテルが見えない。


よく知った街が、霧に包まれていると異世界のように見えてくる。霧の中の風景は、のっぺりと奥行きを欠くようでいて、かえってその奥の深さを意識させるように思う。時間という現象を思いもする。ユーリ・ノルシュテインの映画、『霧につつまれたハリネズミ』を思い出した。友達のコグマのところに木いちごの砂糖漬けを届けにいくハリネズミのヨージックは、霧の中にたたずむ白馬を見て、白馬さんは霧の中でおぼれてしまわないのかな、と不思議に思い、霧の中に入ってみる。「自分の足さえ見えない」霧の中、さあっと落ちてきた枯葉やヒュンと飛んできたコウモリに驚かされたり、一本の大きな木が神様のように見えたりする。川に落ちて流されながらヨージックが見た星空は、いつもコグマと一緒に星を数えているときの星空とは、おそらく大きく違うものだったのだろう。


異世界散歩は楽しい。楽しいのでずっと歩いていたいのだけど、昼飯を食べないままで午後2時半。昔よく行った蕎麦屋さんであったかい蕎麦食べて散歩を続けるという手もあるけど、仕事帰りで荷物が重い。仕方ない、帰りましょうかね。


トンネルを抜けて最寄り駅に着くと、陽が差していた。やはりあれは異世界だったか。


また霧に包まれて歩いてみたい、と願ったところで偶然に偶然が重ならないとこんな機会はないわけで、今日はほんとうに楽しうございました。それではまた、ごきげんよう。

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