2016-12-30

【Archives】 薄い本

2016年も終わりかけ、明日帰省するので大掃除をしているのですが、風呂の大掃除って風呂入ってからするわけで、やっぱり終わってからひとっ風呂浴びたくなってしまうのがどうにも腑に落ちない麩之介です。皆さまいかがお過ごしですか。大掃除のほうはどうですか、終わってますかそうですかそうですね、ハイ。

ということで(なにがだ)、そういや前にも掃除しないといけないのにこんなことしてたな、と思い出したので、過去記事をサルベージいたしました。してる暇があったら掃除すりゃいいのに、と思われた方、わたしもそう思いました…… ご笑納いただければ幸甚です。


薄い本
2013-12-29 21:03:28
テーマ:本のこと


「薄い本」といっても、【肌色注意】のアレではないのでご安心、またはご落胆ください。


大掃除の時期、頭を悩ますのは、この1年で増えた本の処遇であるという方は少なくないのではないかと思う。
本というのは放っておくとどんどん増える。わたしの留守中に勝手に繁殖しているのではないかとさえ思えてくるほどなのだが、まさかそんなことはない。はず。
わが師の、いや、正確にはわが師の令夫人の教え、「一冊買ったら一冊捨てなさい」を守ればいいのだが、正論が往々にしてそうであるように、「それができれば苦労はない」のだ。


そして、「一冊買ったら一冊捨てなさい」が、機能しない場合もまたあるのである。

本の厚みには差があるからだ。

我が家で一番分厚い文庫本は、これである。


もちろん自立する。


以前、複数の方々から、「麩之介は東海林さだおが好きなのではないか」といわれたのだが、残念ながら未読で、しかしそう思う人が多いということは、きっとわたし向きなのだ、ならばなにか読んでみようと思い、どうせなら「東海林さだお入門」と銘打った、著者自選エッセイ集であるこの本にしようと決め、密林でポチって数日後、届いた包みを開けてこれが出た日には、吃驚するより先に哄笑した。このどすこい感はただごとではない。通勤電車で読書派のわたしは、さすがにこれを毎日持ち運ぶことを躊躇したのであった。家で読めばいいとおっしゃるかもしれない。しかし、わたしは家で本を読むときはたいてい寝転がって読むのだ。うっかり睡魔に襲われたりしたら、この本はあまりに危険ではないか。というわけで、買ったはいいが、未読なのである。しかし1,341ページ、その厚さ55mmとは。分冊にするわけにはいかなかったのか。これを1冊買ったなら、標準的な厚みの文庫本であれば4冊は捨てないとダメだろう。


そして、捨てたところで根本的な解決につながらない本もまた存在する。

それが薄い本である。

長い前フリであったが、れぽれろさんより企画パクリのお許しもいただいたことで、「我が家の薄い本ベスト5」。分厚い方は、『なんたって「ショージくん」』で出オチしてしまった以上、もうどうしようもないわけで、薄い方をね。(れぽれろさんの記事はこちら→ 「本の厚みを比較する」  )


さっそく、薄い文庫本を本棚から抜き出してみる。

The nominees are...

1. 『地獄の季節』 (アルチュール・ランボー 岩波文庫)
2. 『風姿花伝』 (世阿弥 岩波文庫)
3. 『ソクラテスの弁明・クリトン』 (プラトン 岩波文庫)
4. 『日本の弓術』 (オイゲン・ヘリゲル 岩波文庫)
5. 『山師トマ』 (ジャン・コクトー 角川文庫)
6. 『黄金の眼に映るもの』 (カースン・マッカラーズ 講談社文庫)
7. 『異邦人』 (アルベール・カミュ 新潮文庫)
8. 『ガラスの動物園』 (テネシー・ウィリアムズ 新潮文庫)
9. 『夢奇譚』 (アルトゥール・シュニッツラー 文春文庫)

いずれ劣らぬ薄さである。9冊抜いても本棚にさほど変化が見られないのが頼もしいというかなんというか、いやはやなんともである。


では計測。

……してみたところ、厚さにはほとんど差がなかった。中を見れば、巻末にほかの出版物の紹介ページがあったりなかったり、そのページ数もまちまちである。ということで、ノンブルの打ってあるページ数+打ってないページ数も比べてみることにする。厚みが同じであれば、ページ数の多いものの方を優位とすることにした。


結果出ました。画像つきでお目にかけようと思うのだが、みな自立は当然覚束ないので、ブックエンドとして分厚い本の助けを借りることにした。(右は我が家の分厚い本第2位に輝いた『ギリシア悲劇IV エウリピデス(下)』 30mm。山田風太郎の『人間臨終図鑑』のほうがもっと分厚かったような気がするが、長期貸し出し中なので、暫定2位) しかし1位と2位との差がはなはだしい。

And the winners are...

第5位、から行こうと思ったら、厚みと総ページ数が同じものが3点……同率3位とし、本文ページ数の少ないものからご紹介することにする。 

第3位: 『ソクラテスの弁明・クリトン』 (プラトン 岩波文庫) 6mm  117p+11p



第3位: 『日本の弓術』 (オイゲン・ヘリゲル 岩波文庫) 6mm  122p+6p



第3位: 『地獄の季節』 (アルチュール・ランボー 岩波文庫) 6mm  123p+5p




第2位: 『山師トマ』 (ジャン・コクトー 角川文庫) 6mm  134p+10p




And now, ladies and gentlemen, the thinnest book in my place is...

第1位: 『風姿花伝』 (世阿弥 岩波文庫) 5mm  126p+2p



最薄本は、世阿弥『風姿花伝』。世阿弥先生、おめでとうございます。

しかし、岩波文庫からなんと四冊が入賞。なのだが、総ページ数が全部同じなのが不思議。


以下各賞の発表です。

ベストパフォーマンス賞(厚みに対するページ数の割合の高いもの):
『ガラスの動物園』 (テネシー・ウィリアムズ 新潮文庫) 7mm  174p+2p



奨励賞(文春文庫って紙薄くなったから、今同じの出したらもっと薄いよね、という理由で):
『夢奇譚』 (アルトゥール・シュニッツラー 文春文庫) 7mm  166p+10p



審査員特別賞(単にわたしがこの作家を愛しているという理由で):
『黄金の眼に映るもの』 (カースン・マッカラーズ 講談社文庫) 7mm  154p+6p



審査員特別賞(せっかく写真撮ったんだから、という理由で):
『異邦人』 (アルベール・カミュ 新潮文庫) 7mm  144p+1p




そしてこういうことである。


いやすごいわ、『なんたって「ショージ君」』。この存在感。寝転がって読むなど畏れ多い(というか危なくてできない)。ちゃんと机で読むことにしよう、ということで、これにて擱筆……じゃないだろう。なにをしているのかわたしは。


こんな記事を書いていては、大掃除は当然終わるわけがないのである。

試験前や、締め切りの迫っている仕事を抱えているときに、掃除を始めてしまうというのはよくあることだ。そして掃除をしないといけないときに、どうでもいいことをしてしまうということ。これもまたよくあることなのだ。人間だもの(で締めくくっていいかな)。



2016年の付記:

3年前の年末も掃除から逃げていたのだな、進歩のないこって、と思いながら写真を見ていたのだけど、この写真では白い壁が見えている場所、現在は本で埋まっている。恐ろしい、恐ろしい。

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