2015-09-14

金沢21世紀美術館へ行ってきましたりなんだり――夏の18きっぷ旅

秋になったといってもいいすがすがしい陽気の日、夏の18きっぷで金沢を再訪してまいりました麩之介です。皆さまいかがお過ごしですか。金沢文庫って、金沢にないのだそうですね。ずっと金沢にあるものだと思って生きてたわたしは軽い衝撃を覚えました。皆さま最近なにか衝撃を受けられましたか。金沢文庫、実際には神奈川にあるのだそうです。じゃあ神奈川文庫でいいじゃないか。だめか。


9月4日。朝5時起床。定休日が月曜なので、なかなか行けなかった金沢21世紀美術館に行こうと思うのだ。昨日はひどい雨だったけど、今日はすごくいい天気でありがたい。


金沢には昼前に着いた。まずは昼飯。前回あまりの人の多さに断念した、回る寿司屋へ。( → 「ピタゴラス、巨大仏、そして諦めるまで――春の18きっぷ旅 加州編(前)」 )今回は少し待つだけで入れた。あれはやはり、北陸新幹線開通直後だったからなんだろうな。

回る寿司屋なので、寿司は軽快に回っている(当たり前か)。しかし、だれもそれを取ろうとはしないで、注文している。金沢における回る寿司屋の回っている寿司は、実物見本なのだろう。前回学んだので、わたしも回っているのは取らないで、そのままくるくる回らせておく。かっ ぱ巻き、のどぐろ三種盛り、かます、鯵、鰯、たまごを注文して食べた。たいへんおいしく、満足いたしました。ちょっと少ないように思われるかもしれないが、実は朝、トーストしたマ フィンにスライスチーズをはさんだのを二つ食べたにもかかわらず、乗り換え駅でホームにただようお出汁のいい匂いにつられて、ついフラフラと立ち食いそば屋に入って天ぷらそばを食べてしまったのだ。むしろ食べ過ぎ。

さて、腹ごなしもかねて、徒歩で美術館 へ向かう。


市役所前の立て看板。あえてなにもツッコミたくない。


さて、目的地着。わくわくするのう。まずはぐるっと館の周りをまわってみた。


館外の数箇所に置かれたこの椅子がすごくかわいい。


意外と座り心地も悪くない。


こういうのが、点々と敷地内にある。


もうちょっといい場所(芝生がもっさり生えてるところとか)のを撮ればよかった……なんだろ、これ、と思って近づいて見ていると、「だれかいますかー?」という声が聞こえたので、ビビってその場を離れてしまった。 これに向かって話しかけると、どっかのらっぱから聞こえるのですね。返事すればよかった。

入館すると、小学生の群れ。校外学習か……そのせいもあるのだろうけど、平日の昼間なのに、ものすごく混んでいた。さて、見ていきましょうかね。


やっぱりこれ、よかったなあ。ジェイムズ・タレルの「ブルー・プラネット・スカイ」。


高い天井の中央が正方形に切り取られた部屋。壁際は座れるようになっているので、座ってボケーと移り変わる空の様子を見ていた。鳥が飛んできたりするといいなあ、なんて思いながら。やっぱり、空しか見えないと、平面的に見えるんだな。なんかルネ・マグリットの、風景の一部が、イーゼルにかかったキャンバスに描かれた絵となめらかにつながっている作品を思い出した。しかしここ、何時間でもいられる気がする。曇りや雨の日も、面白いだろうな。


ヤン・ファーブルの「雲を測る男」。


すごくいい。


「雲を測る男」は、パトリック・ブランの「緑の橋」と一緒に鑑賞できる。こんな感じ。


「緑の橋」 には、金沢の気候に合った植物が植えられている。生きている壁。

「緑の橋」のところにいた、ハクセキレイさん。


超カワイイ。そして、以上の作品はぜんぶ無料で見られます(※ハクセキレイさんは展示品ではないので、見られるという保証はありません)。いや、ちゃんとお金払って見るとこにも行きましたよ。


ほら。レアンドロ・エルリッヒの「スイミング・プール」の「有料の」場所から撮った写真。地上部は無料スペースにある。プールの上のほうがガラス底になっていて、浅い水がためられ、何箇所か人工的に波立たせてある。波は均一でなく、静かな水の部分と波立っている部分があるので、底から見ると、変化がついて面白い。これも飽きないね。プールの底へは地下通路を通って行くのだけど、入り口のほうから明るい青の光がゆらゆらともれてきて、それがすごく綺麗だった。地上からも見てみた。プールの底の人が手を振ってきたので、振りかえす。こういうのが楽しい。そして小学生が案の定、水に手を突っ込んでかきまわしてて、案内してる人にやんわり注意されてた。しかしこの注意のしかたがよかったな。水面の波をよく見て、ほら、同じじゃないでしょ、と、作品の鑑賞ポイントを織り込んで小学生を納得させる。すばらしい。

かと思えば、わたしも入室する際に「お手を触れないでご鑑賞ください」と注意をうけた、カメラ、プロジェクター、マイク、スピーカー等を使用したインスタレーションの部屋で、「触らないでっ!」と大きな声で叱られてる小学生も。それも何度も。「人の話を聞け!」ってことですね。


今回の企画展示は、「コレクション展1 あなたが物語と出会う場所」というタイトルで、恒久展示作品であるアニッシュ・カプーアの “L’Origine du monde” も含まれている(わたしはこれが一番見たかった)。薄暗い部屋の、コンクリートの内壁の一面に傾斜がつけられ、その上方に、真っ黒に見える楕円形。それが描かれたものなのか、穿たれた穴なのか、判然としないのは、光を反射しないから。どうにも不思議な感覚で、立ったり座ったり、位置を変えながら見たりしていた。小学生に解説している係りの人の話が漏れ聞こえてきて、それによると、黒い楕円形は壁面に穿たれた穴で、その内部が濃い青に塗られているのだとか。しかし、“L’Origine du monde”っていうと、ギュスターヴ・クールベだよなあ。これ、真ん前からみると、正面の壁の傾斜のおかげで、側面含めて三面の壁を見ていると、そういうアレが見えてきたりも……まあ詳しくはいわないけど。


このほかに気になったのは、イ・ブルの部屋。天井から吊り下げられた彫刻作品とドローイングが展示されている。「モンスター・ドローイング」と題されたシリーズは、どれも無機的なものの集積が有機的な形を作り出している。彫刻作品の「セイレーン」はこの系列の作品だろう。全体としてみると蝶をイメージさせる形態のようで、無数の触手のようなものがうねうねと突き出しているが、精密な金属部品の組み合わせでできているように見える。同じく彫刻の「サイボーグW8」は、機械の女性の体の胴体、片腕、片足の一部で構成されているように見える。サイボーグって、生体と機械の融合したものだよね。もう一点の彫刻「出現」はギュスターヴ・モローの同名の作品のイメージ。無数の小さな鏡の塊の下に白い布様のものが垂れ、ドレスのようだが、それともこれは、サロメのヴェールなのだろうか。そして突き出す触手。三点とも女性を意識させるもの。で、見ててなんとなく、皮肉のような、悲しみのような、怒りのようなものを感じた。ちょっとこれが自分でもなんでだかはわからないんだけど。単なる印象で、いまのところまだなんの考えもない。この作家の作品を見るのははじめてで、また、これしか見てないので、今後なにかわかるかもしれないし、ひょっとしたらとんだ見当違いかもしれない。なんにせよ、気になったのだった。


入館料は一般360円、大学生280円、高校生以下無料。高校生も無料なんだよ。いい美術館だ。

さて、おおいに楽しんだので、美術館を出て犀川へ向かう。前回は浅野川のほうに行ったので、こんどは犀川。そこになにがあるというのでもないが、室生犀星の詩碑があるらしい。


うっかりしてものすごく遠回りしてしまったのだけど、来ました、犀川。昨日の雨のせいか、水は茶色く濁っている。川べりに下りてみたいのだけど、下りられる所が見つからないので、あんまり面白いものもないような道を川に沿って歩く。あ、ちょっと面白いものがありました。


……こんな顔の人がやってるんだろうなあ。たけし。 店の側面の大きなガラス窓にも、このお顔がデカデカと。名物板さんなんだろうなあ、たけし。


とかいってるうちに、下りられるところ発見。


芝生が青々と気持ちいい。あひるが2羽前方を歩いていたけど、前から来た自転車に驚いて、川のほうに逃げてしまった……向こう岸の芝生に人が倒れている。ね、寝てるんだよね?


あのへんに犀星の詩碑がありそうだなと見当をつけたところで、道路のほうに戻る。


ありました。意外と小さい。着物をかたどっているようだけど、室生犀星をちゃんと読んだことがないので、なぜこのデザインなのかはわからない。


さて、そろそろ駅に向かおう。せっかくなので、長町武家屋敷跡の辺を歩いてみた。と、出くわしたのは、普通の(淡路島のは「Yes, Onion, Yes」仕様だったから、ついこう書いてしまった)コカ・コーラ自販機。


しかし「?」の存在意義が不明。ひょっとしたら100円のはないのかもしれない、と思わせることにいかなる意味が……これはあれか、100円のはないのかも、と不安になった人が、不安を除くために、値段を見ずにはおれなくなり、そうなると商品も見てしまうことになって、販売に結びつく……なんと周到な販売促進方法。(なのか?)


金沢は水路が多く、網目のように街なかを流れている。これは大野庄用水。400年以上前に作られたものだそう。


風情がありますね。スイカや麦茶を冷やしたりもするのかな?



お麩屋さんの看板。 いいなあコレ。ヘッダーに使いたいような……


長町武家屋敷休憩館でちょっと休んだり、足軽資料館を見たりと、のんびり歩いていたけど、そろそろ本格的に帰ったほうがいい時間になってきた。駅の観光案内所でもらった「金沢市観光マップ」を見ると、大野庄用水沿いに行けば、駅の近くに出られるようだ。

と思って歩き出した。しばらく気分よく用水沿いに歩いて行けたけど、あるところで道がなくなった(笑)。ま、方角はこっちでいいでしょ、と歩いていると、また用水が現われたり。用水沿いではないけど、水音が聞こえる道を歩いたり。この状況、ものすごく楽しい。


いい感じの町角に、長ぐつで水溜りに突入するなど、ひとり遊びを楽しむ下校小学生。なんか自分の姿を見るような心持。ここのおうちの雨樋はユニークだなあ。


おおいに楽しみつつ、駅に着いた。前回は目当てのみやげを探すことを諦め、あまりのことに無気力になって富山の駅弁を買うほどに混雑していたみやげ売場が、なんというか、普通の混雑ぶりだった。やはりあれは北陸新幹線開通直後の混乱期だったのだな。駅弁も売り切れてない。というわけで、海の幸満載の、「輪島朝市弁当」を購入して電車に乗り込んだのであった……輪島、ってことは、また金沢関係ないな。まあよいではないかよいではないか。一回行ってみたいんだな、輪島の朝市。

で、これが「輪島朝市弁当」だ!


牡蠣めしにタクアン、たまご焼き、ゴリの佃煮、中島菜の固豆腐、ぶりの角煮、いかとわかめの酢の物、たらのこの旨煮、さざえのいしる煮と、まあどれもこれも、美味いやないか! しかし! 白い飯がほしい! わたしはこの牡蠣めしをおかずに白い飯が食える! いやマジで。



盛大にのどが渇いたわたしは、乗換駅で買った「いろはす」500mlをイッキ飲みしたのであった。

4 件のコメント:

  1. 2年前に訪れた金沢21世紀美術館、懐かしいです。

    「ブルー・プラネット・スカイ」は確かにマグリットの「人間の条件」などの一連の画中画のシリーズを思い出しますね。
    青空というのがそもそもマグリットの重要なモティーフなので、よりマグリットっぽいです。
    自分が行ったときは確か快晴で雲一つなかったので、お空の様子はもう少し単調でした。
    そして、ヤン・ファーブルは計測する対象がなかった・・・笑。

    クールベの「L’Origine du monde」、かつてアメブロに画像を貼り付けたら怒られた(画像を消された)経験があったりします(笑)。

    記事を読んでいると金沢にまた行きたくなってきました。
    牡蠣飯の美味しそうなこと。
    前回訪れておられた泉鏡花記念館にも行かないと・・・。

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    1. れぽれろさん、コメントありがとうございます。

      >青空というのがそもそもマグリットの重要なモティーフなので、よりマグリットっぽいです。

      そうなんですよね。「大家族」の、鳩の形に切り抜かれた青空を思い出しもしました。
      そうそう、れぽれろさんのレビューで見たときは、真っ青な空でした。計測対象なしでしたね(笑)。

      クールベのほうはね(笑)。しかたないといえばしかたないのかな。アレですね、本の価値はおいといて、キレイかどうかだけで査定するブ〇〇〇フ的な清清しさがあるといっておいてやろうかな(笑)。

      お弁当はね、おいしかったんですよ。あれで酒飲んだら最高だったんだろうなあ。

      泉鏡花記念館には、ぜひどうぞ!近くに近代文学館もたしかありました。あ、わたし鈴木大拙記念館には行ってなくて。また行く口実ができました。フフ。

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  2. 久しぶりに覗いてみたら、また、こっそり金沢に来ている。。。(`ヘ´)

    金沢には、町屋を専門に紹介している不動産屋があります。
    ええ感じの町屋を見つけて引っ越してきてください。
    http://www.realkanazawaestate.jp/

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    1. わあああ!! をやzi~さんやないですか!! コメントありがとうございます!!

      もう、ダレかと思いましたよ!! アイコンでわかりましたけど(笑)。うれしいなあ。ほんとにうれしいなあ。

      金沢はいいですねー。大好きですよ。不動産情報ありがとうございます! 身軽になったら引っ越したいですよ、マジで。

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